携帯小説ブーム

世は空前のケータイ小説ブーム。
書籍の文芸部門の売り上げのベスト10の中の半数がケータイ小説から誕生した作品だ。
いまや数十万部の売り上げを記録するケータイ小説も続々と生まれていて、映画化、ドラマ化になる作品も少なくない。
名前を聞いたことのある大手出版社、新聞社は、こぞってケータイ小説大賞なるコンテストを開催している。
ケータイ小説家を夢見る若者が後を絶たない。
そんな中、このブームに乗り遅れていいのか？
ウケるケータイ小説の書き方を伝授しよう。
今からでも遅くない、ケータイ文豪を目指せ。
どんな話を書くのか決めろ。
最初に決めるのは「どんな話にするか」ということだ。
まずは、いつ、どこで、誰が、なんのために、どうする物語なのか、あらすじを考えてみろ。
たとえば「いま（いつ）、学校生活で（どこで）、主人公の女の子が（誰が）、好きな人と恋愛するために（なんのために）告白する（どんなことを）」という物語をイメージしてみろ。
どうだ？
このありきたりな、あらすじだけで、読者に「読んでみたい！」と思わせることはできない。
作る側ではなく、読む側の立場に立って「読みたい」と思わせる、あらすじを考えることが、大事だ。
そのために、もっといろいろな細かい設定をしろ。
読者に「読んでみたい」と思わせるようにするには、どうしたらいいか考えろ。
さきほどの設定を、いじる。
たとえば、いつの設定を「いま」から「卒業間近」に変えるだけで、さっきよりも具体的なｲﾒｰｼﾞが浮かんでくる。
このように、もっと具体的な設定という肉付けをしてみろ。
たとえば、どこでを「放課後の演劇部」／誰がを「マドンナ的存在の部長」／なんのためにを「顧問の先生との禁断の恋愛のために」／どんなことを「先生の妻に電話して、得意の演技力を使って破滅させていく奪う愛」っていうのはどうだ？
こうして、あらすじを具体的にしてみると、さっきよりも、ちょっとは読みたくなったという気がしてくる。
結末がバッドエンドなのは確かだが、悲劇の底をぶち抜けるか否かは作者の力量にかかっている。

携帯小説特有の執筆ルールについて

携帯小説の執筆ルール
携帯（ケータイ）小説は、文字通り携帯電話を通して読むことになるので、従来の紙媒体の小説と異なり、携帯小説はかなりの制約がある。
その携帯表示画面の制限から長文は極力避ける必要がある。
携帯小説では改行を工夫し多用することによって、読み易くする必要がある。
一方で携帯小説における、この手法は行間に感情を込め、独特の間をつくるという新たな表現方法を生み出した。
いまＰＣ上で読んでおられるこの文章にしても、通常の紙媒体と比べると、改行を多用している。
携帯小説の読みやすさを追求する以上、避けては通れない手法だといえる。
携帯小説では、さらにこれ以上の工夫がなされている。
携帯小説における読みやすさを優先させるため、鍵カッコつきの会話文がその大部を占め、その携帯小説の背景説明等も簡略化され、短文で表現されることになる。
携帯小説では、こうした工夫が歯切れのよい文章、そして感情をストレートに伝える文章に繋がっている。
携帯小説はあくまで携帯電話で読むことを前提にした作品であるため、書籍化された場合に気になる部分が出ることも仕方がない。
携帯小説の基本的な執筆ルールをまとめておく。

携帯小説の執筆ルール一覧

携帯電話の画面で読みやすくするため改行を工夫し多用する。
会話分を中心に生き生きとした文章を心掛ける。
携帯電話の画面で読みにくい長文にならないよう注意する。
携帯電話の漢字変換における誤字脱字に注意する。
携帯特有の擬音や鍵カッコ、絵文字の使い方を工夫し活かす。

携帯小説にチャレンジするには、こうした携帯小説の執筆ルールを理解した上で取り組む必要がる。
携帯小説で実際に人気のある作品をいくつか読んでみて、その魅力ある携帯小説独特の文体やストーリーを参考にしつつ、自分独自のオリジナルなスタイルを創ってみるべきだ。
携帯小説における注意点としては、執筆しやすいという理由から、パソコン上で執筆した作品を携帯サイトにアップロードしていると、思わぬ失敗をしてしまうことがあるということだ。
パソコン上では非常に読みやすかった文章が、携帯画面上ではとても読めたものではない、ということが携帯小説では、しばしばある。
携帯小説の執筆では、とにかく注意するべきだ。

携帯小説の登場人物

魅力的な登場人物を作れ。
主人公を中心とした魅力的なキャラクター作りも、大事な設定のひとつだ。
子供の見るテレビマンガのキャラクターを思い出してみると、わかりやすい設定が多いのに気付く。
かわいいorかっこいい外見の主人公は正義をつらぬき、ピンチを克服して悪者を倒す。
これは子供の見るテレビマンガだから成立することで、これを携帯小説の世界に当てはめると、なんだか物足りなさを感じる。
正義の主人公だって恋の悩みがあったり、泣き虫だったり、より人間っぽい方が親しみを持つ。
悪者だって、なぜ悪さをするのか、理由がある。
無知という理由が大半だが。
悪者のボスは、相談すると親身に相談に乗ってくれるような、本当はいいヤツなのかもしれない。
見た目は弱いのに、内面は強い。
二面性を持ったキャラクターは個性に厚みが出てくる。
そうやって登場人物の性格、外見、夢、苦手なものなど、すべてに意味を持たせたとき、はじめて愛されるキャラクターが生まれる。
最初につまらないと思わせては駄目だ。
あらすじ、登場人物が決まったら、即決して文章を書け。
即断即決即実行が携帯小説を書くコツだ。
とくに最初の書き出しは大事だ。
読者に最初につまらないと思われてしまったら、そこで読むのをやめられてしまう。
ここで、2つの例を挙げてみる。
「吾輩は猫である。名前はまだ無い。」
猫の目線で進む話だ。
さすが夏目漱石、だてに千円札に印刷されていない。
「その男は年老いていた」
なぜ、年老いたなんていきなり告白されなくちゃならないのか？
世界的に有名なヘミングウェィの『老人と海』の書き出しだ。
書き出しは、読者に「ん？」と思わせることだ。
結論から書く手法は、かなりインパクトが強い。
これから、どんな物語が始まるのかとワクワクさせることができれば、こっちのものだ。
「今日、担任の先生が警察に捕まった」
「高校生の妹から妊娠したと聞かされた」
「人を殺すなんて考えてもみなかった」
「好きでもない人と結婚式を挙げた」
「10年間貯めた1000万円が消えた」
意外性とインパクトのある一文を考えて、携帯小説の世界に引き込ませろ。
求めるモノは問答無用の理想郷。
主人公が目的を成功させて、結末がハッピーエンドに成るか否かは作者次第だ。