携帯小説の書き出し

ケータイ小説では、書き出しが重要だ。
思わず読者が引き込まれる書き出しとは？
書き出しの１行目が重要だ。
書き出しのコツ。
これは、ケータイ小説に限ったことではないが、作品の書き出しというのは結構重要だ。
ここで、文豪の作品を例に挙げるのもどうかと思うが、まあいい。
例えば、川端康成の『雪国』の書き出しは有名だ。
「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」
これは、海外の作品でも同じだ。
トルストイの作品『アンナ・カレーニナ』では、「幸福な家庭はどれも似たものだが、不幸な家庭はいずれもそれぞれに不幸なものである（中村融訳）」
と、なっているが、これも有名だ。
小説以外でも、書き出しが“名言”そのものになっていることは多い。
例えば、福沢諭吉の『学問のすゝめ』だ。
「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らずと言えり」
という言葉は、江戸から明治へと、時代そのものの転換を象徴している。
このように、作品の書き出しには、著者の“思い入れ”や“センス”がストレートに現れてしまう。
書き出しの部分で読者の心をグッと掴むことができれば、もう半分は成功したようなものだ。
特に、ケータイ小説では、最初の１行目が重要だ。
一昔前であれば、それほどケータイ小説の数も多くなかったので、とりあえず読んでもらえたのだが、今は違う。
続々と発表されるケータイ小説の中から、自分の作品を読み続けてもらうためには、最初の１ページ目、特に１行目から読者を釘付けにしてしまう必要があるのだ。
いくら、後半盛り上がるんだといっても、そこまで、読者は待ってくれない。
書き出しがつまらないと思えば、直ちに他の作品に移ってしまうのだ。
そうした意味では、テレビドラマが参考になるかもしれない。
テレビドラマでは、イントロだけでなく、最後まで視聴者の関心を持続させなければならないという課題があるのだ。
では、どんな書き出しなら、読者に興味をもってもらえるのだろうか？
それは、、読者が「えっ、何？」と思うような書き出しを心掛けれがいいのだ。
例えば、次の書き出しはどう思うか？

（１）今日もつまらない一日が始まった。
（２）夏の日差しが、バイクのミラーに輝いていた。
（３）確か、あの時も同じことを言ってたね。
（４）「なぜだ、なぜ目が見えないんだ」
（５）彼氏とは、もうそろそろ終るつもりだった。
（６）恋は一人でも出来る事、恋愛は二人でするもの。

（１）は、読む方もつまらなくなってしまう。
（２）は、風景描写になるが、あまりインパクトは無い。
一般的に、風景描写から入るのは難しいかもしれない。
（３）は、回想、あるいはポエム形式での書き出しになるが、特に興味を惹かれるということもない。
（４）は、登場人物の感情が全面に出ている。
読者も「なぜ？」と気になってしまう。
（５）は、内藤みか氏の『LOVE＊』の書き出しだ。
余韻を残した書き出しだから、思わず先が気になる。
（６）は、第１回Gocco文学賞最優秀賞に輝いた来栖可南の『手を繋ごう』の書き出しだ。
これは先述した格言的な書き出しで、恋愛の予感がする。
このように、登場人物の心の動揺や葛藤、あるいは、何らかの予感めいた書き出しから始めると、読者も感情移入しやすくなる。
他に、いきなり主人公をパニックに落としいれたりするのも効果的だ。
いずれにしても、自分で読んでみて、思わず「気になるなぁ」という書き出しならOKだ。
いろいろと試してみろ。