五行の気

HARUHI/side story
涼宮ハルヒの憂鬱sidestoryラヴクラフトの世界
五行の気


　着替えようと思ってクローゼットを開けたのだが北高の制服と違ったデザインのブレザーしかない。
「これから君が魔術を学ぶ黒須高の制服だよ」と龍見が言った。
　龍見が俺の部屋を出て行ったので黒須高の制服に袖を通した。
　俺が居た世界と同じ家なのだが異世界だから、どうにも違和感を得る。
　俺が学校に行く準備をしている間に龍見が朝食を用意してくれた。
　異様な感じがするほど普通のダイニング・キッチンで龍見自身が調理したものだ。
「料理が趣味なのだよ」と龍見が言った。
　美味なのだが、この世ならざるヨモツヘグリのような異味も感じた。
「グルメだね、隠し味として五行の気を食材に合わせて籠めておいたのだよ」
　とある物語の記述によると五つの特殊材料を使用して一週間以上の醸造期間を経て黄金の蜂蜜酒を醸すそうだが、その応用か。
「とある寺院で醸造された蜂蜜酒もあるが、聞こし召すか？」
「朝っぱらから酒など飲まんぞ俺の場合」
　修道院でワインを醸造するように、怪しい寺院で黄金の蜂蜜酒を醸造するようだ。
「【テンプル・ブリューのおいしい作り方】という〈本〉を内原富手夫の筆名で書いてみたのだが読んでみるかね」
　五行の気を醸造酒や調理に応用する方法が記述された〈本〉だそうだが遠慮することにした。
　俺が朝食を終えると龍見が皿洗い機に食器を放り込んだ。
「この世界の学校に行こう」と龍見が言った。
　この家が在る夜刀浦町からバスで隣りの黒須町に移動した。
　そして龍見に連れられて黒須高校に登校した。